皆さんは、「哲学者コウ・メダユー」をご存知ですか?
芸人の小梅太夫氏が一日一回「まいにちチクショー」としてツイッターでネタをつぶやくのですが、そのツイートに哲学的解釈を加える謎のツイッターアカウントです。
その解釈を見るたびに私の哲学者魂が揺さぶられまして…いつか自身で考察を加えてみたいという思いが日増しに強まっていきました。
そこで、当ブログで哲学者コウ・メダユーのツイートを哲学的に解釈し、かつ独断と偏見で採点することにしました!
第1回は、私が大学で専攻した最愛の哲学者ニーチェに関するツイートが対象です!
「ニーチェ」で検索したところ、対象のツイートは計4つ!
それでは採点していきましょう!
Contents
「力への意志」を持った猫
この「カーカーカー」は一見すると、カラスの鳴き声である「かー」に見えるが実は違う。そう、“力(ちから)”である。ニーチェの提唱した「力への意志」は、「権力への意志」と訳される事もあるが、小梅氏はこれを動物らに認め、猫達が持つ「力への意志」を独自の表現で生き生きと描いてみせたのだ。
— 哲学者コウ・メダユー (@koume_philo) November 8, 2018
はい、いきなり意味不明ですが、さっそく見ていきましょう!
力への意志ってなに?
つーか、「力への意志」ってなんぞや?と思ったことでしょう。
簡単に説明します。
もともとは、著書『ツァラトゥストラはかく語りき』で登場した思想です。
まず、前提として、「人生は永遠に繰り返す無意味なもの」という思想があることを頭に入れてください。
この無意味さを受け入れつつ、より強く生きようとする意志が「力への意志」と呼ばれるものであり、その意志を持った存在が「超人」と呼ばれるのです!
動物が意志を持つ??
ですが、はたして動物が永遠に繰り返す人生を認識できるでしょうか?
人間以外の動物には不可能だと思います。
前提である永遠に繰り返す人生を認識できない以上、動物が「力への意志」を持つことは難しいのではないでしょうか?
「あれ、矛盾がみつかっちゃった?」
はじめはそう思いました…
猫=ライオンの可能性
しかし、このツイートには140字では書ききれない深い意味があると解釈します!
解釈に猫が出てきていますが、ネコ科の有名な動物といえば…そう、ライオンです!
著書『ツァラトゥストラはかく語りき』では、精神が「超人」になる三段階のプロセスを挙げていますが、その二番目が「ライオン」なのです!
ツイートの「猫達が持つ『力への意志』」は、まさに「『超人』を目指すライオンの意志」ではないでしょうか!
ここまで考察して書いていたとすれば…さすが哲学者コウ・メダユー、深いです…
採点:90点!
最初は致命的な矛盾があるように見えましたが、ツァラトゥストラの解釈を見つけたことで、一気に深みのあるツイートになりました。
名作!90点!
ただ、「猫→ライオン」のつながりを見落としていたら低い評価になってしまっていたでしょう…
採点する方も哲学力を試されているようでちと怖いですw
深淵は水である
有名なニーチェの「深淵を覗き込む時は……」といったフレーズだが、なんと小梅AI大夫氏によると、深淵は水なのだという。少し、こじつけ気味だが深淵をウィトゲンシュタインの述べる限界と解釈するならば、語り得ぬ形而上存在は水となる。万物を水と唱えたギリシャの哲学者タレース的解決であろうか。
— 哲学者コウ・メダユー (@koume_philo) March 12, 2018
これは本家ではなくAIに対して発せられたツイートですね。
珍しく「少し、こじつけ気味だが」と謙遜していますww
(基本的にこじつけ気味なのは置いておいて)
そもそも深淵って?
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」
ニーチェの言葉の中では、「神は死んだ」と並んで有名なものだと思います。
登場している「深淵」ですが、「人生は永遠に繰り返す無意味なもの」という先述の思想に関連します。
ものすごくざっくり言いますと、「永遠に繰り返す無意味な人生」を取り囲む闇のようなものが「深淵」というイメージです。
(ここは安易に語っていいのかわかりません…正直「深淵」だけで論文が一本書けるほどの大きなテーマだと思います。あくまでわかりやすくするための説明だと認識してください)
ウィトゲンシュタインって誰?
(似顔絵があったことに驚き…イケメンですねえ)
ウィトゲンシュタインはオーストリア出身の哲学者で、ニーチェより少し後の時代の人物です。
原語がドイツ語なので、広い意味ではドイツ哲学の範疇に含まれますね。
さて、哲学者コウ・メダユーの書いた「ウィトゲンシュタインの述べる限界」とは、いったいなんなのでしょう。
ざっくり言うと、個々人の持つ言語や思考には限界があるということです。
そうなると、限界の外にある概念については語り得ないわけです。
結果、ウィトゲンシュタインは著書『論理哲学論考』において、「語り得ぬものについては沈黙しなければならない」と述べるに至りました。
これが哲学者コウ・メダユーの書いた「語り得ぬ形而上存在は水となる」につながるわけですねー。
このつながりを140字で説明するのは、さすがに哲学者コウ・メダユーといえども「限界」があるっっ!!
深淵→限界?
さて、ここでニーチェの「深淵」とウィトゲンシュタインの「限界」を比較してみましょう。
- 深淵:永遠に繰り返す無意味な人生を取り囲む闇
- 限界:個々人の持つ言語や思考の限界
…うーん、対応しているのか??
広い意味で「人間の力の及びにくい領域」とでも解釈すれば関係しなくもありませんが…
「少し、こじつけ気味だが」という謙遜の裏にはこういう危うさがあったわけですねw
語り得ぬ形而上存在→万物の根源?
あと、ツイートに「万物を水と~」とありますが、正確には「万物の根源」ですね。
「万物の根源」とは、簡単に言うと「この世界の大元になっているもの」です。
ここでは「世界の原理」と言い換えましょう。
それでは「語り得ぬ形而上存在」と「万物の根源」を比較してみます!
- 語り得ぬ形而上存在:限界の外にある概念
- 万物の根源:世界の原理
こっちの方が対応関係としてはしっくりきますね。
人間には限界があって、世界の原理を認識できないと考えれば…合点がいきます。
おそらく、哲学者コウ・メダユーは「水→万物の根源→語り得ぬ形而上存在」という図式を最初に思いつき、飛躍があることを承知の上で「語り得ぬ形而上存在→限界→深淵」という流れに持っていこうと考えたのでしょう。
採点:60点
水からウィトゲンシュタインまでつないだのはよかったのですが、深淵までのつなぎが思いのほか難しく、本人の言う通りこじつけ気味となってしまいました。
部分的にはつながっていたので60点とします。
たぶん、コウ・メダユーさんもかなり難儀した末の作品なのでしょうw
酒の近くに引っ越す??
「酒」という普遍一般の元へ引越すとは如何なる事態だろうか。実は、今作の酒は、酒一般を象徴する存在であるデュオニュソス神を指している。日々、悲劇的かつ情動的な芸術作品の「まいチク」を生み出す小梅氏は、自身がニーチェの述べる「デュオニソス的なもの」に陶酔しているのだと述懐したのだ。
— 哲学者コウ・メダユー (@koume_philo) December 2, 2017
もはや、どっちが哲学者なのかよくわからない…
「デュオニソス的なもの」って?
「デュオニソス的」とは、ツイートにもあるように、悲劇的かつ情動的な芸術のことです。
著書『悲劇の誕生』に登場する概念ですね。
これに対し、静的・調和的な芸術は「アポロン的」と言われます。
いずれも、ギリシャ神話の神からとられていますね。
近代西洋哲学においては、ギリシャ神話や哲学は古典として重要な意味を持ちました。
(日本人も枕草子を学びますよね? そんな感じだと思ってください)
そんな関係で、私も大学ではギリシャ語の講義を選択しました。
(あまりの難しさに1年でやめましたが…英語とは比べものにならないほど複雑です)
酒→デュオニソス→デュオニソス的→小梅太夫!!
このツイートはつながりが極めて明快でわかりやすいです!
酒といえばデュオニソス!
デュオニソスといえばニーチェの「デュオニソス的(悲劇的かつ情動的)」!
「デュオニソス的(悲劇的かつ情動的)」といえば小梅太夫氏のまいにちチクショー!
完璧な流れです!
しかも、「引っ越す」という表現から酒でなく神(デュオニソス)を導いてくるところも非常にポイントが高いですね!
採点:95点!!
このツイートだけで見れば、ほとんど非の打ちどころがありません。
100点満点を付けようかとも思ったのですが、後にこれよりもすごいツイートが出現したときのことも考えて、-5点の95点とさせていただきます!
深淵からのオカマバー!?
そもそも、光すら抜け出せぬブラックホールからは、今作は投稿され得ない。そう、小梅氏自身が比喩的なブラックホールと化したのである。女装は、性を超越したブラックホールを生み出した。ニーチェの述べる深淵と化した小梅氏は、店主を深淵へ引き入れ、オカマバーの店主へと変貌させてしまったのだ。
— 哲学者コウ・メダユー (@koume_philo) November 24, 2017
「ブラックホールでラーメン食べる余裕あるんかい!」というツッコミはしないでおきましょう…
ブラックホール→深淵?
深淵についてはすでに説明しました。
そう、「永遠に繰り返す無意味な人生を取り囲む闇」でしたね。
対するブラックホールは「光をも吸い込む高密度・大質量の天体」といったところ。
同じ闇のようなものという共通点こそありそうですが、つながりは薄いように見えます…
「ブラックホール情報パラドックス」って?
しかし、このつながりの薄さを解消する学説があります。
それが「ブラックホール情報パラドックス」です。
すごく簡単に言うと、「ブラックホールに吸い込まれて情報が完全に消失すると矛盾が生じる」ということです。
(この矛盾は量子力学と一般相対性理論に関係しますが、詳しくは割愛します)
ブラックホールになればパラドックス解消!
このツイートの秀逸な点は、小梅太夫氏そのものがブラックホールと化しているところです。
自身がブラックホールになってしまえば、情報は消失せず、パラドックスも起こらない。
しかし、ただ吸い込んだだけでは、店長に替え玉を提供されてしまう!
そこで、性を超越することで、吸い込む前と後の状態変化を表現したと…
変化こそしたものの、情報自体は保持されているため、致命的なパラドックスの回避には成功している。
まさしく、小梅太夫氏が科学の一大問題を解決した瞬間と言えるのではないでしょうか…
(んなワケあるかーい!)
深淵とのつながりも見つかった!
ここで、ブラックホールと深淵とのつながりについて解説します。
深淵とは、「永遠に繰り返す無意味な人生を取り囲む闇」でした。
そして、このブラックホールでは、ラーメン店の店主がオカマバーの店主に変わりました。
ということは…「第二の人生」を歩むことになったと言えるのではないでしょうか。
永遠に繰り返す人生の中のほんの一部に、今の生とは違った人生がある。
まさしく、このブラックホールの中で、永遠に繰り返す人生の一端が切り取られているのではないかと…
しかも、大いなるパラドックスを解消した形で…
途中まで意味不明でしたが、なかなか考えさせられるツイートでした。
採点:80点
はっきり言って、途中まで低評価をつける気まんまんでしたw
ですが、最大限に解釈を広げた結果、実は深淵とブラックホールに深い関係があるということに気づかされました。
ただ、真意がやや伝わりにくいところがあるように思います。字数の制限があるので仕方ないかもしれませんが…
というわけで80点とさせていただきます。
まとめ
以上、かなり省略して説明させていただきました。
全体的に、ツイッターの文字数制限により、思想的な背景が抜け落ちるなど、ややつながりが見えにくい書き方になっている点は否めないと思います。
ですが、逆にそれが謎めいた雰囲気を醸し出すことに一役買っているという見方もできますねw
きっと古文書の解読もこんな感じなんだろうと思いますw
疲れはしましたが、書いていてとても楽しかったので、近いうちに第2回も発表します!
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